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【教育規制】香港ショック到来か 全世界への影響度を考える(7月28日更新)

香港で金融ショックと呼べるレベルの現象が起きています。立場によって楽観したり悲観したりあるため、今回は投資家としてどのように対応するかについて、みなさんで考えるきっかけになればと思います。

判断する時間はそんなに多く残されていないため、これまでの流れを時系列で解説し、投資家として各市場の見るべきポイントについて見ていきます。

ではいきます。

香港金融ショックを時系列で解説

暴落のきっかけは中国のオンライン教育規制

2021年7月25日、中華人民共和国教育部(政府)は、オンライン教育に関する厳格な規制政策文書が発表しました。それが以下です。

参考:中共中央办公厅 国务院办公厅印发《关于进一步减轻义务教育阶段学生作业负担和校外培训负担的意见》

文書内容は30項目ありますが、宿題時間の削減や学校教育と同じ内容の規制が書いてあります。さらに以下内容も。

  • 学校のカリキュラムを営利目的で教えることを禁止
  • 資本調達のための上場禁止
  • 週末や休暇中に学校の科目に関連した指導禁止
  • 6歳未満の子供向けオンライン・学術授業の提供禁止

これには中国の教育事情も絡むため、後ろで詳しく解説します。

【1日目】教育関連株が60%超の暴落

そしてこのニュースは多くの香港、中国の金融関係者の間で話題になりました。また、その夜の米国市場でも大きな話題となりました。発表の夜、NYに上場する中国企業2社の株価が暴落し、サーキットブレーカーが発動しました。

好未来(TAL)は-70.76%、高途(GOTU)は-63.26%という米国株式市場では珍しい下げ方です(香港市場では仕手筋でちょくちょく見ます)。それが次のチャートです。

これによって、好未来(TAL)は約607億元(1兆円)、高途(GOTU)は約100億元(1687億円)が蒸発しました

そして、中国の教育関連のETFに組み込まれている個別株(香港株、上海株、深セン株、米国株)はどれも下がっていることがわかりました。

さて、これを見てどう思いますか?一時的だと思いますか?

【2日目】香港・中国全体が急落

そして、翌日の26日、香港市場をはじめとする上海、深セン市場で急落がはじまりました。

これを見て、まだ焦る段階じゃないと感じる人もいるかと思うのですが、指数がこれだけ下落すると世界中の投資家や金融関係者が動揺します。なぜなら、まだ2015年のチャイナショックの記憶が残っているからです。

この日の夜、米株市場は中国コンセプト株(海外に上場する中国企業株)を中心に大きく下落しました。

中国コンセプト株(2021年7月26日NY)
BABA(アリババ)-7.15%
BAIDU(バイドゥ)-5.96%
DIDI(ディディ)-0.25%
TME(テンセントミュージック)-2.97%
PDD(ピンドゥオドゥオ)-8.84%
NIO(ニオ)-1.86%
BILI(ビリビリ)-8.14%
WB(ウェイボー)-4.41%
FUTU(フーツー証券)-7.37%
JD(JD.com)-8.59%
TCOM(Trip.com)-6.90%
中国コンセプト株は全体的に下落

僕も緊急生放送で初日のNY市場について実況しましたが、警戒はかなり強めでありながらも様子見との結論を出しました。

様子見の理由は米国銘柄が強かったからです。その日の米国銘柄をいくつかピックアップします。

米国代表銘柄8社(2021年7月26日NY)
AAPL(アップル)+0.29%
AMZN(アマゾン)+1.18%
GOOGL(グーグル)+0.77%
FB(フェイスブック)+0.72%
MSFT(マイクロソフト)-0.21%
TSLA(テスラ)+2.21%
NVIDIA(エヌビディア)-1.35%
NFLX(ネットフリックス)+0.21%
米国S&P500の最強銘柄は粘り強いです。

上記の8社はS&P500の27%のウェイトを占める最強銘柄です。これまでS&P500が維持されてきたのは、これらの銘柄が支えていたからでもあります。実際7/14日には429銘柄が下落するという1996年以来の歴史的下落数を記録したにも関わらず、FAAMG+3と呼ばれる(僕が勝手に読んでいる)この8社の力によってS&P500は上昇したのです。

つまり、この8社は米国市場に希望を与える銘柄ともいえ、執筆時点では影響は軽微です。

そして問題はこの次の日の相場です。

【3日目】香港・中国は惨状に 米国にも影響か

政府の公式声明から2日後の27日の香港市場は再び大きく下落しました。それも前日よりも大きく。それが以下のチャートです。

上海の売りは強さを増し、ハンセンテック指数が特に売られ-8.43%で引けました。引け前でも売りの圧力は衰えず。上海の人気ファンド白酒も連日下落しました。以下がそのチャートです。

中国で有名な株式ファンド

このファンドは中国の一般の素人たちにも好まれており、構成銘柄の90%以上が株式です。教育関連株も入っていたりするのでこのようなファンドも軒並み下落を極めています。

この日の夜、中国の暴落した2社の教育株は反発しました。

中国教育株2社(2021年7月27日NY)
好未来(TAL)+25.23%
高途(GOTU)+15.60%

とはいえ、チャートを俯瞰するとただ下げ止まっただけで、反発しているようには見えません。物理法則上、一旦跳ねたように見えます。好未来によれば、事前にメディアから政府による規制の情報を23日にはもらっていたらしいのですが、それからたった数日では対処できるはずもなく、ビジネスに大打撃を受けた形です。なにせ非営利企業になってしまうのですから。

さて、今回の騒動ですが、いよいよ米国最強銘柄にも波及してきたようにも見えます。以下を見てください。

米国代表銘柄8社(2021年7月27日NY)
AAPL(アップル)-1.49%
AMZN(アマゾン)-1.98%
GOOGL(グーグル)-1.59%
FB(フェイスブック)-1.25%
MSFT(マイクロソフト)-0.87%
TSLA(テスラ)-1.95%
NVIDIA(エヌビディア)-0.45%
NFLX(ネットフリックス)+0.47%
米国S&P500の最強銘柄のうち7社が下落。

アップル、グーグルの4-6月期の決算が米国株式市場の引け後に発表され、市場予想を上回る結果となりましたが、アップルはアフターでも上昇の弱い動きとなりました。その理由は次のツイートの通りです。

香港の影響度はどれほどのものか、まだわかりませんが、念の為引き続き警戒します。

そして、中国コンセプト株はさらに下落し、悲壮感が出てきました。

中国コンセプト株(2021年7月27日NY)
BABA(アリババ)-2.97%
BAIDU(バイドゥ)-2.80%
DIDI(ディディ)0%
TME(テンセントミュージック)-4.78%
PDD(ピンドゥオドゥオ)-10.35%
NIO(ニオ)-8.83%
BILI(ビリビリ)-5.41%
WB(ウェイボー)-8.29%
FUTU(フーツー証券)-14.47%
JD(JD.com)-1.98%
TCOM(Trip.com)+2.52%
中国コンセプト株は連日の下落。

今年もてはやされた証券会社の富途(FUTU)は底が見えませんし、共同購入で補助金ビジネスの拼多多(PDD)は投げ売りされている惨状です。テンセント・ミュージックはいよいよ10ドルを割って9ドル台へ突入です。

【4日目】香港反発、本土は維持

そして、4日目の香港市場は反発し、上海・深センは一時プラス転換して引けは小幅のマイナスとなりました。

そして、香港株式市場では今回の発端でもある教育関連株が軒並み反発しました。それが以下の銘柄です。

ただし、この数字マジックには気をつけなければなりません。これらは既に数千億~数兆単位の金額が蒸発しているのです。+12%だとしてもチャートで見れば微々たる反発です。

ここからはさらに細かく分析します。以下の画像を見てください。

これは香港と上海・深センの業種別(時価総額順)のヒートマップです。

これを見て気になるところがあります。香港株が下げ止まった(正確にはまだわからない)のに対し、上海・深センは多くの業種で資金流出が続いており、時価総額の高い業種でなんとか支えました。

各市場の相場見解については、この後しっかり解説しますが、今回は中国の教育文化にも関わってくる内容なので、中国教育の日本との温度差の違いも共有しておきますね。

中国の教育事情

すでに中国事情に詳しい方もいるかもしれませんが、知らない人が多いと思うのであえて話します。

中国では幼少期から熱心な学習教育がスタートし、今の世代は幼稚園から英語を学び始めるといいます。小学生の頃は泣きながら夜遅くまでみんな勉強をし、遊ぶ時間なんてありません。これまで一人っ子政策できたせいか、親も一人の子供に対してお金をかけます。そこに中国の人口の多さが競争に拍車をかけ、塾に通うのは当たり前という風潮があります。

また、大学にも色々なレベルがあますが、公立(国立)大学が勝ち組の印象が強いです。有名な北京大学や清華大学はその代表格です。一方で私立大学は学費が年間200万円くらいしたりとバカ高いんです。日本の音大かよ!とツッコミたくなりますがそういうものなのです。対して日本は私立が多く、早慶、MARCHレベルだからといって多くの人が国立に行きたかったーとはなりませんよね。

中国では親孝行を美徳とする文化が強くあるので、当の本人である子供も親に迷惑をかけないために必死に勉強をし、安くてレベルの高い国立大学を目指します。そんな背景もあり教育ビジネス市場が拡大を続けてきました。

高校生でも朝6時に起きて7時に自習開始、その後に授業、塾、今日の復習などで寝る時間が24時という毎日を送る学生は少なくないです。今回の規制は義務教育レベルに強く規制がかかっているので、高等教育レベルにどれくらい影響するかはわかりません。ここでは、それくらい親もお金をかけ、誰もが小さいころから勉強で辛い思いをしてきたということを知っておけばOKです。

しかし、教育業界の一部のアナリストは、今回の政府の声明によって、教育関連ビジネス全体が70%以上低下する可能性があると述べています。

今回の暴落相場をどう考えるか

さて、今香港や上海、深センで金融関係者をやってきているアナリストやトレーダーも当然、上記のような勉強の毎日をしてきましたし、今回の政府による規制がどれだけインパクトのあるものかは、彼ら一人一人の中で感じていることでしょう。

ただし、これだけの懸念は示しつつも、僕はあらゆる可能性を想定していきます。場合によっては一時的な一領域内で収まる可能性もあります。未来を限定させすぎると危険であることもまた事実です。

その上で、これから各市場について見ていきます。

香港市場

まず、香港市場に関わる金融関係者の中には、米国株市場も担当する人たちがいます。彼らは常に香港ドルと米ドルの関係を見ますし、香港市場とダウの関係も気にかけています。次のチャートは香港ドル/米ドルチャートです。

香港ドル/米ドルは現在急落中です。香港から資金が流出しているのは明らかです。だからといって米国株式市場に資金が流れているとも限らないので注意が必要です。

そして、2日連続で株式市場が大きく下落し、すでに国内ではパニックになっているものの、引け間際も売りが加速したところを見るとまだ下がる余地があります。

ただ、ポジティブなニュースもあります。大手金融機関のシティ関係者からは香港に上場する企業に対して、株主の信頼を取り戻すために自社株買いを推奨していると聞きました。

また、香港市場に参入する投資銀行の中には、3、4週間前には既に撤退を決め込むところがある一方で、金融事業に関する当初の予算を維持する機関もあることを別の関係者から聞きました。つまり、決して悲観一色というわけでもなさそうです。

そして市場の背後には、「国家隊」が控えていることも忘れてはいけません。国家隊とは政府が支援する複数のファンドで、時々政府の指示で彼らが介入し、市場の下支えとして機能することがあります。

とはいえ、結局は多くの上海系ファンドが上海だけでなく香港銘柄にも関わっており、多くの上海系ファンドの下落が続いていることもあるので、投資家心理を冷やしている事実もあります。

つまり、上海・深セン市場が香港に続いて下落幅を拡大させる可能性は十分にあると僕は考えています。

では、次に日本や米国についても考えていきましょう。

日本市場

日本株式市場は、米国株の影響が受けやすいですし、コロナ感染者が東京都だけでも過去最高を記録したので、日本売り円高になる可能性が高いです。

2015年に起こったチャイナショック時は上海総合指数と日経平均が連動していて、僕は当時専業投資家だったので、上海の動きを見て日経ETFを売買しているくらいでした。今後連動しないとは限らないので、その辺りも頭に入れておいてくださいね。

金融ショックに発展しなければ個別株で魅力的であれば買ってもいいですが、それも米国市場が耐えるかが鍵となります。もちろん円高にも気をつけたいところです。

米国市場

米国株式市場は、今回の過去最大の規制とまで言われた非営利化によって、市場は動揺し、中国コンセプト株は軒並み下落をしています。

特に米国株市場は最近はSPAC上場の連発で赤字でも許容されてきましたし、中国企業への投資を強める動きは起こっていました。ARK Investはその典型ですよね。問題はこれらの中国コンセプト株の多くが赤字体質で監査なしということです。これまで期待で上昇してきた株は今回をきかっけ下落しています。

そこで上記で挙げたFAAMG+3に注目します。これらが全面下げるようなことが起これば、それはS&P500が下落すると判断します。そして、中国関連株のみの下落にとどまる可能性も考えます。

実際はFRBは量的金融緩和(QE)を続けているわけですし、コロナの状況も改善の見込みがないので、まだQEを続け株式市場を維持することも可能性としては忘れていません。米国のQEがどのような状況かは毎週金曜日夜の生放送でリスナーの方にお伝えしているので、是非リアルタイムで聞いてみてください。

僕としては、米国株ポートフォリオのうち、中国コンセプト株は現在はWeiboのみです(先日bilibiliを売却)。なので、これを売却するか検討中です。資産全体では約半分がコモディティで穀物各種やシルバーを握っており、米国株は中長期目的で以前から保有を続けているTESLAやNETFLIX、NVIDIAはまだ握っておこうと考えています。本格的な危機がやってくるならバーゲンセールになるので、その前の下落で再度判断します。

速報記事なので、今回はこの辺で。また何かあれば書きますね。