ロシア株

【保存版】 約束されたロシアの経済成長の話

僕が年初から投資対象として力を入れてきたロシアですが、今年4月に一度、『リセッション迫る米国経済と救済手段が一つに限られた日本株式市場 そして欧州について』の中でも触れたように、同国は、主要国の中で今後最も楽観視できる国であると考えています。

クリミア問題以後、米国やその周辺国(G7)による経済制裁によってロシア国民は混乱していました。その結果、制裁による負担を負った一般市民も欧米への反発を強くし、プーチンへの信奉を強めていきました。

今回はクリミア問題以後のロシアを分析しながら『今後の投資対象としてのロシア』を占っていきます。

投資判断

株式

[強気]
ルーブルと原油下落、経済制裁などの影響が重く乗りかかりモスクワ証券取引所では出来高が減ってきていましたが、現在ではMICEXは史上最高値を更新中RTSは経済制裁からの回復期に入りつつあり、ドル資本の流出入がポイントとなりそうです。僕から見れば極めて割安であり、今後の発展に欠かせない政治面・経済面での素地が整うことを予想しています。

G7の経済制裁も、過去数年に亘り積み上げてきた外貨準備高で守りきることができ、その残高も枯渇を知らない。世界で最も嫌われた株式市場なだけに僕は特別ともいえる程の魅力を同国に感じている。

原油

[やや強気]
現在の価格より高い価格で取引され、今後数年間、緩やかな上昇基調にあると考えています。以下が昨年(15年4月)に示した価格推移の予想です。左側が年、右側が価格。

国内事情

1.ロシア国民の生活

経済制裁によって国民の生活は苦しくはなりましたが、マイホーム所持者も多かったこともあり、存外、国民は耐えることができています。さらには、生活基盤がある程度安定しているために、子供を持つ家庭が増え、出生率は伸びています。結構な額の出産手当が付くことも寄与しているのです。

[出生率の推移]

ただし、消費が伸び悩んでいるため、暫くは耐え時と見ています。生活基盤がしっかりしていることで、徐々に生活水準に戻りが見られるだろうと考えています。公務員に関しては給与額が他国に比べ極端に低い代わりに一度に限り住居の私有化が可能で、立場関係なく公務員は住居費補助を政府が無償で負担するといった法律があります。また、国家公務員の数は年々増加傾向にあり、人材不足の状況は続いています。

2.原油の減産とルーブルの強化

原油の生産量に纏わる問題は暫く続いていました。2月の4ヵ国合意でロシア含めた4ヵ国が生産水準の凍結を合意。ただしイランが反対で失敗。4月の18ヵ国会議、6月のOPEC総会でも合意なし。

ところが、9月に動きがあり、OPECで減産に合意、イランによるGOサインが出ました。

先日11月末日には生産の割当量が決定し、2008年以来、8年ぶりの減産へと踏み切ることになりました。生産は3324万バレル/日から3250万バレル/日へ。

3.着実に縮小する対外債務

経済制裁でルーブルが下落し、ルーブル建て対外債務の評価替えによる減少が見られました。

また、制裁効果で海外からの借り入れが難しくなりましたが、それを上回る規模で返済が行われました。取り分け、民間の返済が顕著でした。短期債務に対する外貨準備高も堅調に上昇傾向にあり、そこからも返済が進んでいたことがわかります。ロシアの対外債務のうち、半分が国内から海外に流出し、再び借入という形で国内へ戻ってきたものです。

4.中央銀行総裁の実力~為替介入~

ロシアは経済制裁以前より外貨準備高を積み上げていた経緯があり、対露制裁発動後、大規模な外貨売りを続けていました。現在では落ち着きを取り戻してきており、回復局面へと突入したと読み取ります。

各国の対露制裁は資本流出を招き、経済戦争にまで発展をしました。ロシア政府も対欧米経済制裁を発動し、政治家や著名人らの対象国口座を凍結、渡航も禁止にする措置を執りました。原油下落や資本流出によるルーブルの弱体化は、さらなる資本流出を呼び起こしました。現在ではルーブルを変動相場制へ移行させ、ドル売りをやめた中銀ですが、外貨準備の回復は意識している模様。

5.デフレ下における内需型転換への挑戦

経済制裁初期の頃、ロシアからの輸出は規制せず、国外からの輸入、取り分け食品系(動物由来の肉・乳製品・穀物等)が極端に減少し、価格も数十パーセント上昇しました。

中銀のレポートに目を通すと、15年の13%まで上がったインフレ率は、16年末には6%までは下がるとの見込み。

中銀予測をまとめると以下のようになります。

一時的にスタグフレーションの入り口に立たされましたが、実質賃金は減少し、消費マインドの冷え込みから小売売上高に大きく影響。目下のところ、幸か不幸かデフレ傾向を強めている状況です。

しかし、デフレスパイラルには陥らないでしょう。表にもあるように実質GDP成長率は回復傾向にあり、外貨準備高も落ち着きを取り戻すとの見通しです。3年後の19年には家計支出が15年の4倍以上もの回復を見せるでしょう。

また、内需の増加から農業など国内産業の発展が今後期待されます。つまり、G7の経済制裁に耐えたのです。ロシアは事実ウクライナからもシリアからも撤退をしていないため、欧米は制裁に失敗したことになります。

今後の金融政策は、インフレ率の低下から17年1Q-2Qには更なる政策金利引き下げを検討すします。中銀としては慎重な見方が必要だが、政治面でプーチンが上手く立ち回ることがでると考えるため、楽観視を貫きます。

安全保障

トランプ次期大統領決定直後のロシア動向

米国は先日大統領選挙でドナルド・トランプが勝利し、来年から彼が米国のリーダーになります。ロシアとしても彼を歓迎しており、その関係性次第で今後の状況は大きく変わることだけは確かです。トランプ大統領という更なる不確実性リスクが増したことで緊張感は生まれ、今後も日米露中の極東地域のパワーバランスが大きなテーマになることが想像されます。

■大統領投票日当日

■トランプ当選後
プーチンとトランプが電話会談。テロリズムや過激派への協力を合意。
→ロシア軍シリアへの空爆を再開。
→ホワイトハウス報道官(オバマ政権)、ロシアの軍事行動を非難。

もともと次期大統領が決まる前から、ロシア政府や同国メディアは総じてトランプ歓迎ムードであり、実際にトランプに軍配が上がった直後にはプーチン自らが彼に対し祝福の言葉を述べていたほどです。

その二人が電話会談をした直後に、ロシア軍の空爆再開。唯一にして最大の空母『アドミラル・クズネツォフ』を戦線へ投入し、戦闘機はそこから発艦。ロシアはシリアに対し初めて空母からの軍事攻撃を開始しました。地中海を航行するならば、安全保障問題がまた進展することになります。

日露関係

日露問題の主軸として挙げられるものは平和条約と領土問題、これらに付随するものとして経済協力があります。

平和条約

安倍首相の家系はこれまで幾度とロシアと外交をしてきたが署名は叶いませんでした。安倍晋三首相の祖父である岸首相や、父の安倍晋太郎も成しえなかった両国の平和条約締結は家族の名誉でもあるため、安倍晋三首相の本気度が窺えることでしょう。

北方領土問題

日本の世論は『二島を返還後、残りの二島の協議をする』という意見が比較的多く、ロシア側の世論は『一島も渡すべきでないと』いう主張が圧倒的多数です。

この領土問題は、日本政府が妥協して三島以上を譲る、或いはニ島返却後、残りニ島の共同運営という名の実質ロシア運営にする可能性も考えられます。なぜなら、安全保障に対するアプローチがあると予想されるからです。

現在も24時間日々日本列島周辺をロシア軍機が旋回しています。もし北方領土とその周辺が日米安保の適用外、つまり米国が関与できない区域と決まれば、日本は戦後から進展のなかった『脱米国』に踏み切ることになります。その場合、自国で北海道や北方領土にミサイルを配備、或いはロシア軍に守ってもらうといった条件が追加されるでしょう。

ロシアのこれまでの領土問題の解決の決め手となったのは、「面積等分」か「相手国の放棄」のどちらかです。

経済協力

4月の記事にも記したように、今後の日露のパイプライン建設は、日本にとってロシアへの大きな借りとなるでしょう。また、合同プロジェクとして極東地域における資源開発や、ロシア軍機の購入など、対価と成り得るものがいくつも存在します。現在のロシアからすれば、国内へ投資を喚起し、再び成長軌道に乗ることが回復局面からの課題となっています。

想定し得る両国の条件提示

[ロシア側]

天然ガスパイプラインの建設
ロシアと日本はパイプライン建設を以前より計画しています。

極東地域における防衛網の強化

ロシアは北方領土の択捉、国後両島に地対空・地対艦ミサイル『Бастион(バスチオン)』を配備。ミサイルは地対艦ミサイルの3K60バル。バスチオン配備により600km範囲への対応を可能にしました。『日露交渉に向けて』という意図の他に、米国戦闘機・イージス艦に対して先手を打つという意図が読み取れます。日本に対し、『北方領土4島を自国の領土にする』という言葉にしない圧力であり、米国(日米安保)適用外から成る日本防衛の意思表示ともいえます。

実はこの流れは既に3月時点で決まっており、日本でも報道はされていました。無人ドローン配備なども伝えられており、緊張感が強まることに間違いはないです。

政府主導でロシア人の日本観光促進

平和条約調印へ協力
日露戦争の歴史的な経緯はプーチンには通用しません。彼は条件を曲げないし、交渉においても日本は苦汁を飲まされる可能性が高いです。

[日本側]

ロシア企業への出資協力

ロシアの国営企業であり、世界的に巨大規模であるロスネフチ、バシネフチは以前より民営化が考えられてきました。しかし、原油価格の下落により現在では株式の買い手が集まらない状況です。そこで日本が協力する可能性が考えられます。また、国営企業だけでなく民間においてもプロジェクトも立ち上がり、投資が続々と開始されるでしょう。

露財務省によると、2社の売却で1兆ルーブルを見込む。国内借入1,000億ルーブルを年末までに増額予定。

トランプが次期大統領に決まり、日本もロシアと関係を構築する意思を強く表明できるようになりましたが、それからというものの、プーチン政権の決断の早さがあまりにも迅速且つ的確です。

北方領土へのミサイル配備は、制空権を支配し、日本周辺の防衛をロシアが担うといった意図が背後にはあるでしょう。それにより、北方領土は日米安保の対象外とし、日本と米国との関係の切り崩しに繋がるだろうということです。さらには、ドル弱体化とルーブル圏の構築に重きを置き、日本へ対しても北同様、ルーブル借款のプロジェクトを増やしていく狙いがあるということです。

ロシアとしては平和条約署名を条件として様々なことを約束させることができます。つまり立場としてはロシアの方が圧倒的に強い状況が作られているといえるでしょう。

国内政治

先日、ロシアで下院選挙が行われ、統一ロシアが議席の3分の2以上を占める圧倒的強さを見せつける結果となりました。ウクライナ問題以後、統一ロシアの支持率下落に懸念が示されていたもののここまでの結果を見せつけました。

さらに、クリミアがロシアに併合されたことで、元検事総長のポクロンスカヤ氏が統一ロシアから立候補。ウクライナ問題をきっかけに彼女に白羽の矢が立った形です。政治家に転身しクリミアを治める役割の一端を担うことになりました。また、彼女も欧米の経済制裁の対象リストに加えられています。

ここまで、今後ロシア経済の発展が約束されているという根拠を示してきましたが、取り分け同国は、国内においても政治的影響力が他国に比べて強く、プーチン大統領の署名が全てであるため、引き続き彼の動向を注視する必要が出てくるでしょう。