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復活の兆し、日本マクドナルドの課題と挑戦 [追記:16/02/11]

このテーマについて草稿を書いている間、日本マクドナルドHD側から新たな情報が出てきたこともあり、予定より早く記事をアップすることにしました。

右図にもあるように、日本マクドナルドの既存店客数が回復がしていることの背景には、幾つかの要素が密接に絡んでいます。

出所:日本経済新聞

マクドナルドは食品消費期限切れ問題で大幅な赤字を垂れ流している状況です。

そんな中でも、ビジネスマンのコーヒー需要は相変わらず根強く残っており、その他の層に向けたドリンクの提供はマックシェイクの巨峰で少しは新たな展開を望めるのでは、と昨年末より感じ始めていました。

しかし、既存店客数についていえば、もっと単純で、ただ離れた客が戻ってきてるだけということが見て取れます。というのも、食肉問題の前後で人の増減が顕著に表れた千代田区秋葉原の店舗では、現在その記憶を無くしたかのように昼時は盛況であることが度々見られ、その様子はグラフからもわかるでしょう。

そして現在、回復のスピードを上げるような施策が展開されています。
とあるバーガーの名前を募集するという企画で、その元の名前が『北海道産ほくほくポテトとチェダーチーズに焦がし醤油風味の特製オニオンソースが効いたジューシービーフバーガー』というのですが、これを見てお気づきでしょうか。一見これから名前募集バーガーを売り出すために企画しているようですが、実ははじめから名前なんて必要なかったのです。これは宣伝内容を名前に含んで売り出すこと自体が目的なのです。

たしかに斬新な企画ですが、それも某広告代理店が協力しているという背景を一つ忘れてはいけません。このハンバーガーには、Youtuberの裏タイアップ(ステマ)や各方面のメディアを利用した目立つ宣伝方法で今口コミも含め非常に話題となっています。六本木のヒルズ周辺にくどいくらいに散りばめられた広告の数は圧巻でした。客足を伸ばすという点では成功したといえます。僕もそのマーケティングにのって実食してきましたが、ポテトとタマネギの組み合わせがよかったと感じました。

今回の企画は日本マクドナルドの回復の兆しであると確信しています。それに株価面でも主観では割安感の意識が強まってきており、僕としては、国内株式では現時点で一番注目していきたい銘柄と位置づけています。

ここで売上高の推移を見てみましょう。

直近の財務をざっくりと計算してみます。

(※2/4現在公表されているCF計算書は14年のもので直近と大きく乖離していると考えられるため、あえて一部指標を乗せていません)

まず、ご覧の指標では利益項目に関しては酷い有様です。
ただ、悲観一色というわけでもありません。

単に稼ぐ力がないのです。ここからは、何かを削るより、設備投資やマーケティング等から直接的・間接的に発生する利益、費用対効果が今まで以上に求められ、また直接的に数字に影響するという意味で、『経営』そのものが要となります。僕の経験上、様々な産業において、財務はある程度保てていても業績を回復できない企業は少なくありません。この状況を打開するための日本マクドナルドにとっての課題は、「斬新なアイディアの創出」であり、「経営ノウハウのインポート」であり、「消費マーケットでの戦略的な立ち回り」です。経営ノウハウのインポートといっても、(原田代表時代のメニューボードを下げた施策のような)単に外部からノウハウを取り入れろというわけではなく、日本人にあったやり方でマーケティングを行っていく必要はあります。顧客志向を大切にできてるかは外食産業で非常に重要な点です。

他業界ではありますが、ヤフーも回復から好業績へもっていく過程で、経営陣を代え、様々なアイディア溢れる施策を展開しました。挑戦的という意味では同じニオイをマクドナルドからは感じます。ただ、ヤフーと違って外食産業は今後も食料物価の高騰なども考えられるため、状況はまた大きく変わってくるとは考えています。

また、同社はこれまでモスバーガーやロッテリアといった競合他社と差別化を図ってきたが、これからは、これまでどおりの差別化ではうまくいかなくなるでしょう。上でも触れましたが、原材料価格高騰から生じる商品単価(客単価)の上昇などを仮定するならば、品質重視、サービス重視に寄っていくのは必然であり、タイミングとしては食肉問題は転換期のベストタイミングであったと考えます。運がいいです。吉野家がその時その時の経済環境によって「うまい」「やすい」「はやい」の順序を入れ替えているように、マクドナルドも変化の時なのだとひしひしと感じています。

今後は、米マクドナルドが日本マクドナルドの株式33%を、英投資ファンドや国内商社に売却を検討しているという話に焦点が当たるでしょうが、33%というのが33.4%なのか、それとも33.3%未満なのかというところもポイントとなるでしょう(一社なら恐らくインセンティブとして拒否権くらいは与えるだろうと考えます)。経営ノウハウを吸収し、新たな事業体系を構築できることに期待しています。


追記(16/02/11)

2月9日、日本マクドナルドHD決算発表がありました。

今回は過去最大の赤字に焦点が当たっていますが、大事なのは28年12月期の連結通期業績予想で純利益10億円の黒字を見込んでいることです。上の内容(2月4日付)にも書いたように、復活の兆しがここで数字としてもはっきりと出てきました。

のれんは増加傾向にある。新聞・ニュース記事では店舗閉鎖に注目する中、実際はフランチャイズ店舗を買収しています。不採算店舗閉鎖の先をしっかり見据えて動きだしていることがわかるでしょう。直ぐに収益に結びつかないものの、ここまでの経営は評価できます。全店舗を順次、モダン調な内装にしていくとのことです。今は、のれん等はあまり意識せず、ブランド価値の向上と商売戦略、生産の変化、収益性などを多面的に観測する必要があると考えます。

本決算で、経営サイドは一部範囲における固定費をいじることはできており、収益性の強化にシフトしている段階にあることを、再確認できたかと思います。人件費削減、マーケティングに係る費用の増加も背景にはあるかと推測しています。不採算店舗の閉鎖はどんな企業でも行うことであり、原田元代表の経営していた時代と明らか違うところは、米国に倣う商品の展開ではなく、日本人を意識したマーケティング、表現方法、戦略が根底にあることです。今回の決算内容からもそれは依然として感じられます。

今後は限界利益で277億円以上増加させる必要が出てきます。それが達成されれば、その頃には経常利益の黒字化は望めるでしょう。

そもそも、日本マクドナルドはこんなにも国内で認知されており、日本のファストフードマーケットを代表する会社一つとしてイメージが定着していますが、実はジャスダック市場に居続けているのです。赤字脱却する過程で株式価値が向上すれば、安定した利益水準の実現も見えてくるかもしれません。