マクロ経済

【臨時記事】 日銀がマイナス金利導入を決定!伝統的金融緩和の先にある日本経済とは

市場にとって想定外の展開なので急遽記事を書かせていただく。

本日16年1月29日。日銀の金融政策決定会合にて、賛成5反対4でマイナス金利導入が決定された。当座預金の「一部」にそれを適用する。「一部」というのは、当座預金を3分割して捉え、それぞれにプラス金利、マイナス金利、ゼロ金利を適用し、具体的には「基礎残高」、「マクロ加算残高」を上回る部分にマイナス金利を適用するといったものである。

黒田日銀総裁会見


まず、これまで量的緩和にこだわってきた日銀が、今回マイナス金利という考えを取り入れたことはイールドカーブへの対策に繋がり歓迎できる。イールドカーブを押し下げるのではなく、イールドカーブの起点を押し下げるというところが注目される。

直近では、銀行・保険セクターの株価が急落しているが、他方で不動産は急騰といった状況である。(付利引き下げ)発表を受け10年物国債金利は0.1%を割り、過去最低の0.095%にまで到達。この現象は、不動産セクターにとっては追い風となり、金利で食べている銀行セクターや、運用部門で苦戦を強いられる保険セクターには打撃となった。今後、黒田バズーカと呼ぶ記者も出てきそうだが、バズーカとは全然違う。

黒田日銀総裁は会見で、伝統的な金融緩和であれ、量的・質的緩和であれ、実質的なイールドカーブを上昇させることにより物価上昇期待を引き上げ徐々に物価安定目標に近づけていくと述べた。金融機関の収益悪化が懸念されているが、量的・質的金融緩和によってスピード感を持って日本経済を成長させなければならないといったニュアンスで受け取れた。なにせ20年までのタイムリミットは5年間なのだから…時間は刻々と過ぎていく。

今後の日銀の動きとして、量的・質的・伝統的(金利的)緩和を織り交ぜて出してくるというということだが、先に述べたように、筆者はこの転換はアリだと考える。ちなみに量的緩和は、これまで通りマネタリーベースを80兆円増加、買い入れる国債の平均残存年数は7~12年、ETFの買い入れは年間3兆円の考えは維持とのこと。

筆者は今回の付利の引き下げは、今後のマネタリーベース増加、追加買入の所謂黒田バズーカ第3段へ向けた準備であったと考える。当然のことながら、欧州との通貨安競争や米国債との金利差も考えた上での判断でもあると思われる。日銀が買いオペを実施しやすくなる条件は整いつつある。


さて、こんなサプライズが市場を揺るがしているわけだが、日銀の弾数も含めて政府による国家運営を今後も継続して観測する必要があることは言うまでもない。

この国は、負債が1000兆円が強調されているが、バランスシートの純額で見るならば、総資産は490兆円ほどのマイナスとわかる。

2015年1月に公表された2013年度の財務書類によれば、負債は1143兆円、資産は653兆円。ネット国債は490兆円。資産全体に占める金融資産の割合がそれなり高いこともご覧いただけるだろう。

連結ベースで見ると、政府子会社を含めた純額は451兆円のマイナス

ここで問題となっているのが日銀が連結ベースに含まれていない(政府の子会社扱いを受けていない)ところにある。

では、直近の日銀の2015年12月31日現在のバランスシート(2016年1月5日公表分)を見てもらいたい。

資産383兆円(うち国債325兆円)、日本銀行券98兆円、当座預金253兆円

政府の直近バランスシートは定かでないものの、日銀を含めた連結ベースでのネット国債は120~130兆円ほどではないかと筆者は読む。別の見方として、無利子分を含めた日銀券、当座預金を含めた純額で450兆円のマイナスと捉えることも可能。どちらで考えるかで読み方は大きく変わるだろう。いずれにせよ、1000兆円の借金という話が誇大なものであると解釈できるだろう。まだ日銀は限界を迎えていない。

とはいえ、実際のところ、人口構造問題、隣国との関係、タイムリミット5年、国内スタグフレーション、外的な金融・経済要因など、その他の要因も影響してくるので、筆者は政府の連結BSの実態がわかっても危惧している。今後数十年を見た時に、国家の財政破綻しないだけの人口減少対策、や、国民生活を支えながらの税収対策をどう採るのか。依然として解決策はなく、深刻であるという筆者の考えに変わりはない

今回のマイナス金利導入はECBに続く社会実験である。金融機関の運用部門では、保険会社が早い段階でBクラスの格付け債権へシフトを始めているため、そこに拍車が掛かることに間違いはない。