日本株

大阪のUSJを我がものにしたコムキャストの思惑

本日10月25日付の日本経済新聞web刊のトップに掲載された記事がこちら。

 今年の海外勢によるM&Aには、規模の大型案件が多い。
そこで、取り上げるものに迷ったが、今日はあえて規模的に控えめな買収案件について書いてみようと思う。

 9月28日、テーマパークを運営しているユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下USJ)は、今秋上場予定だったものを取り下げた。その理由は米メディア大手のコムキャストによる子会社化を発表したからだ(※1)。買収額は1800億円。ドル換算では1.5億ドルほど。

 USJはもともと上場していたが、2009年にゴールドマン・サックス(以下GS)系企業によるMBO(マネージメント・バイ・アウト)により経営権が譲渡され、非上場となった(※2)。その際には大阪市も保有していた株式20万株をGS側に譲渡している。

 そこから独自の色と地道な戦略が道を開き、売上を積み上げていった経緯がある。現在ではアニメやゲーム、芸能人ともコラボレーションをし、昨年2014年には、ハリーポッターのアトラクションを建設。優秀な造形師らによって形作られた驚くほど立派な城まで建て、見事、映画の舞台を完全再現してみせた。毎年ハロウィンではテーマパークのあちこちにゾンビが出没するなどのパフォーマンスが大盛況であり、今、一番波に乗っているといっても過言ではない。

『テーマエンターテイメント協会(Themed Entertainment Association;TEA』の調査資料(※3)によれば、世界のアミューズメント施設の上位10の施設の中ではUSJが一番伸びていることが認識できる。以下は入場者数の増減。

 しかし、まだまだ顧客満足度や入場者数を上げる余地はあり、たとえば、土地を買い取ることで新たなアトラクションの設置、それに伴う混雑に対する不満の解消や、テーマパーク内から見える阪神高速道を見えなくしたりなどがある。そのための上場であると筆者は(経営陣の意図は別にして)勝手に期待していた。

 今回のコムキャストによる買収がどういうものかは、コムキャストの子会社であるNBCユニバーサルとこれまで運営に努めてきたGSを知らなければ何もわからない。そもそも、USJは、米ユニバーサルグループ各社とライセンス契約を結んでおり、キャラクターは米国から借りてきている。比較相手としてディズニーがあるが、東京ディズニーランドは世界でも入場者が特段と多く、米ディズニー社とライセンス契約を結んでいるが運営は現在までオリエンタルランド(日本)が行っており、独立している。USJは独自色である外部とのコラボを進める一方で、買収されることで、よりユニバーサルグループとは切り離せない関係になっていくだろう。

  一部の報道ではコムキャスト側から打診があったとあるが、GS側の立場としても幾つかの決定事項が判断の後押しをしたのではないかと、可能性の問題として想像する。

  その決定事項の一つとして挙げられるのは、大阪都構想である。橋下市長と松井府長らによって進められてきた大阪の都市計画(行政改革)が頓挫したことが経済効果としても大きいと考える。もう一つ、借入地の賃料上昇である。敷地40%を大阪市が保有しているが、他部分の民有地の賃料と同額(増額)にするよう求めた裁判の判決が15年3月に出た。その判決に従えば、今後はUSJ運営側の固定費が上昇する。上記2点はまさにGS側の問題と捉えることができるだろう。

 それらを加味して再度考えると、今回の買収は当然親会社のコムキャスト側の都合であることは間違いない。さらにいえばGSの金勘定も含まれている。そういう点でいえばGSは建て直し役だったといえる。世界でも入場者数の増加が2位、4位の東京ディズニーランド(並びにシー)が30周年を終えて入場者数、売り上げ共に鈍化・減速した今を狙って、今コムキャストは攻めてきているということである。グループ全体の売上を日本のUSJを使って追い上げるチャンスと踏んでいるはずである。捕捉だが、コムキャストは買収にかかる費用が嵩むとの思惑から発表後の株価は売られている。

 ここで再びTEAの資料に目を移してみると、グループで見た入場者数でも9,10位を除けば米ユニバーサルが一番成長著しいとわかる(※4)。

 そこで一つ問題点となるのが、買収発表の前に発表された沖縄のテーマパーク建設についてである。コムキャスト経営陣に理解訴えるとの内容が報道側からも出ていたが、注視する必要がありそうだ。とはいえ、大阪の本陣では来年16年春にはジュラシックワールドをテーマとしたジェットコースターを建設するなどの期待があるため、筆者は夏場の天候と入場者の推移に注目しようと考えている。

 このように、M&Aというのは経営体制の見直しや周囲の経営環境、ライバル会社や関連会社の動向などでいきなり方針転換することもある。大人の世界はお金で動くため、密約も交わされることも珍しくなく、表に出てくる情報だけでは理解できないことも多々ある。

 経営陣の意図を追及するのは取材をしているメディアやアナリストに任せておけばいいというのは素人考えで、彼らでも読み解けない部分を解いていくことが大事であると思う。本記事では、そのような要素があるかは定かではないが、自らが体験してきた経験と独自の分析で導き出された結果、そしてそれについての筆者の考察を記したまでである。

※1:コムキャストによる買収発表

※2:GSによるUSJのMBO詳細資料

※3, ※4:TEA調査資料(PDF)